【SESとSIerの違い】就活の企業選びを比較表で完全解説!

SIerを志望していると一緒になって出てくるのがSES企業です。
正直、SESと言われてもパッと来ないし、企業を選ぶならちゃんと納得して選びたいという方にSESとSIerの違いから比較表までまとめました。
私の意見としては、SIerに入って1社でずっとやっていくか、SESで技術領域を磨いて転職市場で強くするかだと思っています。
将来的な自由度を考えるとSIerに入るのは若干リスキーかなと思いますが、企業をしっかりとリサーチしては入れるだけの能力があるならSIerもありです。
本記事ではSESとSIerの違いから就活でどちらが向いているのか、違いと適正の観点から比較表で解説します。企業を見極めるための方法も合わせて収録。

SESとは?仕組み・契約形態・働き方
まずはSES企業とは何か、仕組み・契約形態・働き方の観点から情報を整理しておきます。
SESの仕組み
SES(Software Engineering Service)は、自社に籍を置いたままクライアント企業へ常駐し開発・運用を支援するビジネスモデルです。
派遣とは異なりエンジニアはSES企業の正社員として雇用され、案件ごとにチームで常駐するケースが一般的となっています。
工数を月単位で提供し、現場の一員として顧客の指示に従うため、業務プロセスや文化を肌で学べる点が大きな特徴です。
一方で複数企業を渡り歩くため、帰属意識が希薄になりやすく、キャリアの方向性を自分で主導しなければスキルが断片化する懸念もあります。

SESの雇用形態
SES契約の多くは準委任契約で、人月単価×稼働時間を基本に料金が決定します。
成果物責任は顧客側にあり、エンジニアは工数と技術力を提供する立場です。指揮命令権はクライアントに移るため、労働時間や作業内容は案件次第で変動しやすくなっています。
評価制度は資格取得や稼働率でシンプルに設定される企業が多く、実績を数値化しやすいメリットがあります。
しかし、短期間でプロジェクトが変わるせいで長期的なキャリアプランが描きづらいという課題も存在します。
SESの働き方
案件期間は3か月~数年と幅があり、エンジニアはプロジェクト終了とともに新たな常駐先へ移動します。
勤務地は首都圏中心ですが、一部地方案件や夜間対応を含む運用保守も存在し、働き方は多様です。
最新技術に触れられる案件を選べる反面、チームや体制が変わるたびに人間関係を構築し直す必要があり、適応力が求められます。
リモート案件も増加傾向ですが、機密性の高い現場では出勤を強いられるケースも多く、事前に勤務形態を確認することが重要です。

SIerとは?役割・商流・プロジェクト体制
次にSIerについてまとめていきます。SIerはプロジェクトを牽引する仕事のため、役割、商流、プロジェクト体制の3つの観点で紹介します。
SIerの役割と商流
SIer(System Integrator)は、要件定義から設計・開発・保守まで一気通貫で請け負う受託開発企業です。
上流の企画段階で顧客課題を整理し、システム化計画を立案できる点がSESと大きく異なります。
商流の最上流(プライム)に位置する一次請けSIerは顧客と直接契約し、下位層に協力会社を束ねてプロジェクトを管理します。

二次請け以下はマージン構造の影響で単価が下がりやすく、上流に行くほど裁量と報酬が高まるピラミッド型が形成されるのが特徴です。

SIerの契約形態
主契約は請負契約で、成果物に対する責任を負います。
見積り段階で工数と金額を確定させ、納期厳守および品質保証を求められるため、プロジェクトマネジメントとドキュメント管理が仕事です。
自社PM/PLが指揮命令権を持ち、下請けを統括しながら開発進捗を管理するため、スケジュール遅延が発生すると自社側で工数を吸収するリスクも存在します。
その分、工程管理や顧客折衝スキルが鍛えられるため、上流志向のエンジニアには大きな成長機会となります。
SIerのプロジェクト体制
プロジェクトは一次請けを頂点とした多重構造で進みます。

大規模案件では要件定義・基本設計を自社内で行い、詳細設計以降を協力会社に委託するケースが一般的です。
勤務場所は自社オフィスやデータセンター、場合によっては顧客先常駐と混在しますが、テレワーク環境が整備されつつあり設計フェーズからリモート参加する例も増加中。
役割分担が明確なため、専門領域を深掘りしやすい一方、ローテーションが少なく業務が固定化する可能性もある点に留意が必要です。

SESとSIer8つの違い【比較表で一目瞭然】
SESとSIerの8つの違いは以下のとおりになります。
比較項目 | SES | SIer |
---|---|---|
契約形態 | 準委任(人月課金・工数提供型) | 請負(成果物課金・一括請負型) |
指揮命令権 | クライアント(客先側リーダー) | 自社PM/PL |
主な勤務場所 | 客先常駐(オンサイト中心) | 自社開発+客先ハイブリッド(上流は自社オフィス) |
参画フェーズ | 構築〜運用保守が中心、改善提案 | 企画・要件定義〜保守まで一気通貫 |
キャリアパス | 横展開で技術幅を拡大し、クラウド資格で転職しやすい | 縦昇格でPM・ITコンサルへステップアップしやすい |
年収カーブ | 20代前半は高水準→30代以降鈍化しやすい | 20代平均→役職昇格に伴い30代以降伸長 |
残業傾向 | 障害対応など突発的残業、月平均28h | 工程末期に集中型、月平均24h |
教育制度 | OJT中心、自己研鑽主体(資格補助は限定的) | 階層別研修・資格補助・メンター制度が充実 |
就活生が知るべきSESとSIerのメリット・デメリット
ここまではざっと情報的な違いを見てきましたが、実際にはどちらに入るべきか?という問題です。そのための判断軸としてメリットとデメリットを整理しました。
新卒でSESに入るメリット
SESは未経験枠が大きく、文系や非情報系でもIT業界へ滑り込むチャンスが豊富です。
短期スパンで多様な業界・技術スタックを体験できるため、将来の専門分野を見極める材料が増えます。
また、常駐先で運用フェーズまで携わることで障害対応や改善提案スキルが磨かれ、「現場に強いエンジニア」として重宝される人材へ成長可能です。
希望次第でクラウド移行やセキュリティ強化など特定分野に深く関与できる案件を選択し、市場価値を高める戦略も取れます。
- 未経験でも応募しやすい
- 多業界・多技術を短期で体験
- 現場力が鍛えられる
- クラウドやセキュリティに特化可能
- 転職・独立の選択肢が広がる
新卒でSESに入るデメリット
最大のデメリットは客先依存により勤務地・働き方が不透明な点です。
案件終了後に待機(ベンチ)期間が発生すると給与や評価が停滞し、スキルアップ機会も限定的になります。
さらに、商流が深い案件では中間マージンにより単価が圧縮され、同年代と比較して年収が伸び悩むリスクもあります。
常駐先での評価が直接給与に反映されにくいため、自己研鑽と資格取得でスキルを可視化し、キャリアを主体的に設計する姿勢が不可欠です。
- 勤務地・働き方が不透明
- 待機(ベンチ)期間のリスク
- 商流が深いと低単価
- 評価が客先依存
- キャリアを自走する必要
新卒でSIerに入るメリット
SIerでは要件定義から運用までフルフェーズに関わるため、PM・PLへのステップアップが描きやすい環境があります。
社内研修やメンター制度が整い、大規模案件では最新クラウドサービスやDevOpsツールを導入する機会も豊富です。
組織的にドキュメント文化が根付いており、設計書レビューや品質管理を通じて体系的に技術を学べる点が魅力です。
役職昇格とともに給与テーブルが上がるため、30代以降に年収を伸ばしやすい傾向があります。
- 上流工程に直結
- 大規模案件で最新技術に触れる
- 研修制度が充実
- 明確な昇格ルート
- 福利厚生と安定性
新卒でSIerに入るデメリット
分業制が進む大手SIerでは特定工程に固定され、スキルが縦割りになるリスクがあります。
多重下請け構造の下層に配置されると意思決定が遅く、顧客との距離が遠いためビジネス視点を養いにくい点もデメリットです。
繁忙期には設計変更や追加要件が集中し、残業負荷が高まるフェーズがあることも覚悟が必要です。
自ら上流工程へ手を挙げる積極性と、外部勉強会で最新技術をキャッチアップする行動力が求められます。
- 分業制で工程が固定化
- 多重下請け構造の影響
- 繁忙期に残業が集中
- 技術トレンドのキャッチアップは自主性頼み
- 大組織ゆえの柔軟性の低さ
【一覧表】SESとSIerの違いでわかる向き・不向き
SESとSIerの違いからあなたの向き・不向きはなんとなくわかります。自分がどっちに向くかチェックしてみてください。
判断軸 | SESが向くタイプ | SIerが向くタイプ |
業務スタイル | 障害対応や運用改善など“現場で手を動かす”タスクが好き | 要件整理・スケジュール管理など“計画を立てて指揮する”タスクが好き |
勤務地/転勤 | プロジェクトごとの常駐や出張を楽しめるフットワークの軽い人 | 首都圏または特定拠点で腰を据えて働きたい人 |
技術志向 | 多言語・多クラウドを横断し幅広く試したい“ゼネラリスト” | 特定ドメインを深く掘り下げて“スペシャリスト”を志向 |
将来像 | フリーランスや社内SEなど横移動で自由度を高めたい | PM・ITコンサルなどマネジメント/上流に縦昇格したい |
学習スタイル | 案件で実験→自己学習→即投入の実践サイクルが得意 | 体系的研修+社内勉強会で段階的に学びたい |
残業耐性 | 障害対応など突発的な夜間作業も許容できる | ピーク時を把握し計画残業で対応したい |
年収志向 | 若手で早期に高単価案件を狙い“先行逃げ切り”型 | 役職昇格とともに安定上昇を狙う“後半追い上げ”型 |
対人コミュ力 | 新しい現場での人間関係構築をポジティブに楽しめる | 長期でチームを率い関係性を深めるのが得意 |
プロダクト志向 | さまざまな会社のシステムを改善し“渡り鳥”的に成果を出したい | 自社製品・大規模基幹システムを腰を据えて作り込みたい |
安定志向 | プロジェクト単位の変化を楽しみながら市場価値を維持 | 会社組織内で昇格・福利厚生の安定を重視 |
リモートワーク希望 | 常駐現場の要件に合わせオンサイト比率が高くてもOK | 設計・管理フェーズ中心で在宅ワーク比率を高めたい |
成長スピード | 毎年異なる技術・業界に触れて急成長したい“短距離走型” | 長期案件で腰を据えて専門性を磨く“マラソン型” |
就活生のSIerとSESのよくある質問
就活でよくある質問をまとめました。
Q1. SESとSIerはどちらが残業が少ない?
案件規模や企業文化による差は大きいものの、SESは緊急性の高い障害対応が発生すると深夜作業となる恐れがあり、月間残業中央値はおよそ10時間です。
一方SIerは工程末期にタスクが集中するものの、計画的に工数調整できる企業が増加しており中央値25時間程度と言われます。
残業抑制には、企業の36協定順守状況や工数管理ツール導入有無を確認することが重要です。
Q2. 新卒でSESに入ってもキャリアアップできますか?
新卒でSESに入社しても、クラウドやネットワークなど市場価値の高い領域で実務を積み、AWSやCCNAなどの資格を取得すれば3年目以降に自社開発企業や社内SEへ転職する事例は多数あります。
- 案件選択時に最新技術を扱う現場を希望する
- プロジェクトごとに成果と学びをNotionなどで整理
- 技術ブログやQiitaでアウトプットして可視化する
上記の3点。これらを徹底すれば採用担当が即戦力と判断し、年収面でも好条件を提示しやすくなります。
Q3. SIerはブラック企業が多いって本当?
「SIer=ブラック」のイメージは、多重下請け構造の下層で働くケースを指すことが大半です。
一次請け比率が高い企業は自社裁量が大きく残業管理も厳格ですが、下位層ほどマージン圧縮で工数が不足し、長時間労働になりがちです。
- 一次請け割合を開示しているか
- 残業代が1分単位で支給されるか
- みなし残業の超過分を全額支給するか
上記の3点を確認し、面接で質問。曖昧な回答しか得られない場合は避けるのが無難です。
就活で失敗しない企業リサーチ4か条
IT業界の企業の約3割がブラックと言われています。そのため、しっかりと企業のリサーチをすることが重要です。リサーチのポイントを4つ紹介します。
- 契約形態を確認
- 商流の深さを質問
- 配属フローの透明性
- 待機期間の給与保証
契約形態を確認
求人票に「準委任」か「請負」かが明記されているかは、企業の労務透明度を測る指標です。
準委任は工数提供型で現場経験を広げやすく、請負は成果物責任を負うため上流管理スキルを伸ばしやすいです。
自分がどちらのキャリアを目指すかを言語化したうえで契約形態を照合すると、入社後のギャップを最小限に抑えられます。
面接で契約変更の有無や割合を質問し、労働条件が案件によって極端に揺れないかをチェックしましょう。
商流の深さを質問
商流が深いほど中間マージンが重なり、給与と裁量が目減りします。
面接では一次請け比率やプライム案件の有無を具体的に尋ね、50%以上を目安に評価しましょう。
一次請けが多い企業は顧客折衝や要件定義に関与でき、成果が評価へ直結しやすいメリットがあります。
逆に下位層では作業範囲が固定化しやすく成長が頭打ちになるため、長期的なキャリア形成を考える就活生は必ず商流を可視化して比較検討することが重要です。

配属フローの透明性
研修後にどのような基準で案件が決まるかを把握できないと、希望外の業務に長期拘束される恐れがあります。
配属前にヒアリングシートを用意しているか、複数案件を提示して選択できるか、途中で方向転換できるかを確認しましょう。
透明なフローを持つ企業は研修担当と営業が連携し、定期面談で目標設定を行うため、成長実感を得やすい点が魅力です。
逆に「空いている案件から割り振る」方式は要注意です。
待機期間の給与保証
案件切れの待機(ベンチ)期間に給与が減額されると生活基盤が不安定になります。
満額保証か、一部減額でも固定手当があるか、自己研修費を会社負担で受講できるかを必ず確認してください。
優良企業は待機中に社内開発や資格学習プロジェクトを組み込み、評価対象に含める仕組みを採用しています。
保証が曖昧な場合は長期的に収入が目減りするリスクが高いため警戒が必要です。

【SESとSIer】就活生のためのキャリア選択の違い
最後にSESとSIerはどのようにキャリアが違うのか見ていきます。
上流志向ならSIer
要件定義やプロジェクトマネジメントに早期から携わりたい就活生には一次請けSIerが最適です。
顧客折衝を通じてビジネス課題を整理し、システム全体を設計する経験は、30代以降のPM・コンサル職へ直結します。
多重下請けを避けてプライム比率の高い企業を選び、社内研修とメンター制度を活用すれば、最短3年でリーダーポジションを目指すことも可能です。
現場志向ならSES
多様な現場で運用改善やDevOps実践を重ね、市場価値を横展開したい学生にはSESが向いています。
クラウド移行プロジェクトやセキュリティ強化案件を選び、AWS・GCP資格を体系的に取得すれば、3〜5年で自社開発企業や社内SEへのステップアップも狙えます。
案件選択の裁量が大きく、短期で技術トレンドをキャッチアップできるため、変化の激しいIT市場で柔軟にキャリアを構築したい人に最適です。
IT業界は基本的にあなたの学歴と言語化能力がどのくらいあるかで、入れる企業が大きく変わります。
まずは、現実的に狙える企業はどこなのかを就活支援サービスに相談することをおすすめします。